生きがい発見! セカンドライフ④
〜男だって料理は楽しい〜
これまで職場が中心となっていた生活は、退職を機に大きく変わっていきますが、職場という活動場所がなくなることに不安を感じる方もいるかもしれません。でも、変化は大きなチャンス。家庭を生活の基本にしながら、同時にその外にも活動の場を広げていく絶好の機会です。シリーズで、退職後のさまざまな活動の場をご紹介します。
2やってみた、男の料理
入会したきっかけや、料理をやってみた感想はさまざま。「おとこの台所」に参加しているみなさんにお話を伺いました。
家族の絆が深まる
「孫の笑顔が見られる幸せ」熊谷さん(72歳/会員歴半年)
定年退職から数年が経ち、奥様の勧めで入会した熊谷さん。最近はもっと自分で料理をしてみようという気持ちが芽生え、インターネットでレシピを調べてご自宅でつくってみたりしているといいます。
「料理では、やっぱり味付けをするが好きですね。レシピのとおりやってみて、できたときにどんな味になっているのかが楽しみ。そこから自分でだんだん変えてみたりするのもおもしろいです。この間、孫が遊びに来たときに季節の野菜でタジン鍋をやったら、孫がすごく喜んでくれて! 嬉しかったですね。」
「妻の入院がきっかけで一念発起」小倉さん(81歳/会員歴2年)
ラグビー、音楽、そば打ちなど、多趣味な小倉さん。奥様は食べることが好きで料理が得意なため、「食べる役」専門でした。入会したきっかけは、奥様の入院です。
「自分で料理しなくちゃと思ったんですが、妻が退院したらまた食べる役に戻っちゃって、家では2回しかつくっていないんですが(笑)。妻に『たまにはつくって』と言われるので、ぼちぼち始めて月に1回くらいはつくろうと思ってます。そば打ちも習っているんです。自分で作っておいしいものができるのは楽しいですよね。」
「料理は『人をつなぐ力』」小竹さん(77歳/会員歴14年)
小竹さんは、退職後、自分のために食事を用意してから出かける奥様を見て「迷惑をかけている」と感じて料理を始めました。会の厨房担当を10年以上務め、今では自宅の冷蔵庫にあるものでさっと食事をつくれる腕前です。料理に夢中になった契機は、おとこの台所主催の食事会。小竹さんをはじめとするメンバーが、会の方針である"ちょっと手のこんだレシピ"をふるまうと、招いた女性たちが驚き、とても喜んでくれました。
「硬い表情だった初対面の人が、食べるとニコニコ笑って『また呼んでね』と帰っていく。料理は短時間でこんなにも人と人を結びつけるんだと初めて知ったんです。」
料理は夫婦の結びつきも強めています。奥様の帰宅時刻に合わせて温かいお味噌汁を用意すると、「こんなにおいしいお味噌汁は初めて」というお墨付きをもらったそう。また、遊びに来た奥様の友達をもてなすことも。「ミートローフと何品かつくったら、みんなびっくりして家で話したらしくて。後で旦那さんたちに『余計なことをするな』と顰蹙を買っちゃいました(笑)。」
活動的に、元気になる
「どんどん外に出るように」石山さん(66歳/会員歴7年)
そば打ちを習っており、もう少し料理をやってみたいと入会した石山さん、ご感想は一言、「楽しいですねえ」。食事の支度を気にせずに出かけられるようになった奥様にも喜ばれているそうです。今後、味付けを覚えてご家族に食べてもらうのが目標。また、料理を始めてから世界が広がったと話します。
「通りかかったお店で食材が気になったり、食べ物屋さんでは『あんまりおいしくないな』とか、『段取りが悪いんじゃないかな』とか(笑)、いろんなことに敏感になりましたね。外に出ていくのも、いろんな人と話すのも苦痛じゃなくなりました。」
「段取りを考えて認知症予防」山下さん(74歳/会員歴12年)
初心者から始め、やがて厨房担当を引き受けた山下さんは、毎回、料理講習会(事前学習会)に参加する前に自宅でレシピを試作し、家族と試食。「『おいしい』と食べてくれたり、『こうしたら』と意見をくれたり。楽しいというより真剣です(笑)」。昨年、厨房担当をもっと若い人に引き継いでもらってから家庭での料理の機会は減りましたが、ご家族が集まる際には、パエリアやキッシュ・ロレーヌなど、リクエストに応えて腕をふるうそうです。山下さんにとって、料理の魅力は?
「『温かいものを最後に』とか、おいしく食べるための段取りを考えると、頭を使いますよね。料理は認知症予防にも最適だと思います。やっぱり、『おいしかった』と言われるとよかったなと思います。」
料理を通じて仲間ができる
「みんなに会いたいから」名取さん(72歳/会員歴13年)
72歳になる代表の名取さんは、元気なうちから老後を充実して過ごすためのエネルギーを使おうと、58歳で退職を決意。退職直後は、区報などで興味があるサークル活動を探してどんどん参加してみたそうです。その中で出会ったのが「おとこの台所」でした。さまざまな活動の中で、特に料理を長く続けてこられたのは、なぜだったのでしょうか。
「やってみると新鮮で楽しく、食べたらおいしいので料理を好きになったのですが、それと同時にどんどん仲間ができた。みんなに会いたいから続けてきたのだと思います。料理はみんながバラバラすぎたらうまくいかない、でもチームプレーでもない。その距離感もお互いにちょうどいいのでしょう。多少失敗しても、それなりにおいしく食べられますしね。
今では代表としてあちこちの台所(世田谷区内に9か所)に顔を出すので、さらに知り合いが増えて、いろいろな話が聞けます。それが私の勉強であり、楽しみです。企業とは違って規則も上下関係もないこの組織をどうまとめるのかということも、人生経験になっています。」
料理は、食生活のためだけではなく、精神的な充足、家族との関係づくり、そして地域デビューや仲間づくりなど、世界がさまざまに広がる可能性をもっています。ご自分に合った場所やスタイルで、気軽に試してみてはいかがでしょうか。
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② やってみた、男の料理