2少しでも楽に過ごしたい

 例えば、うつ病を疑って心療内科を受診して治療を受けても症状が軽くなったと感じられない場合は、泌尿器科を受診して相談してみましょう。メンズヘルス科という名称もあります。男性の更年期障害は適切な治療を受けることで、心身ともにぐっと調子が良くなります。

 でも、できれば深刻化する前に自分で予防できるものならば、心がけておきたいものです。

その1 運動

遅れて出てくる筋肉痛は運動不足

 筋肉痛は加齢に伴い、痛みを感じるまでの時間が遅くなって「筋肉痛が出るのが翌日でなくて翌々日になってきた」などと言われています。しかし、実際は年齢とは関係はありません。本当は、日頃の運動量(筋肉の活動量)によって、筋肉痛がでてくる時間が変わるのです。つまり年齢に関係なく、日頃からスポーツやウォーキング、ジョギングなどをしている人は筋肉を活発に動かしているために、筋肉痛が出にくく、出ても当日や翌日なのです。翌々日に痛み出すのは、日頃の運動不足で筋肉が衰えていて「痛みが出る」という反応が遅れているのです。これはまさに筋肉の老化現象です。筋肉トレーニングは室内で出来るものなので、毎日の習慣として行えば、男性ホルモンの分泌を助け、低下による筋肉の衰えや痛みを防げ、しかも肥満予防にもなるというメリットもあります。

 運動をすることで男性ホルモンの分泌を促すことが明らかになっています。スポーツを行うほどのことでなくても、腕立て伏せやスクワット、腹筋運動などの筋肉トレーニング、息が切れるぐらいの速度のウォーキングが効果的です。いきなりジョギングをするのは危険です。速度の速いウォーキングから入りましょう。

 運動は夕方や夜に10分程度がおすすめです。なぜ夜かというと、男性ホルモンは朝に高くなり、夕方に下がる特徴があります。ですから低下したホルモンの分泌を促すためには夕方以降に行うのが良いのです。

 毎日の生活のなかでは、エスカレーターを使わずに階段で上り下りをする習慣をつけていきましょう。筋肉トレーニングをすることで、ホルモン量の低下による筋肉が落ちていくのを防ぎ、筋肉痛がでるのを抑えることができます。

その2 やけ食いはしない

 男女を問わず、イライラして「やけ食い」など食べることでストレスを解消しようとする人は多いようです。やけ食いをすると、自然に食べる量が増えて太ります。そうすると、更年期障害を助長することになってしまいます。40歳以降は肥満による生活習慣病(高血圧や糖尿病、脂質異常症など)の危険性が高まりますので肥満にならないような食生活が更年期障害を防ぐことになります。

よく噛む

食べ物をしっかりと噛むことで脳内物質セロトニンが活性化され、不安やイライラを緩和することができます。するとやけ食いのように、たくさん食べなくても気持ちは落ち着いてきます。
 人の食欲は脳の満腹中枢が刺激を受けると、収まるようにできています。満腹であると脳が認識するのです。脳の満腹中枢に20分ほどかけてようやく到達します。つまり、どんなに速く食事を終えても、食べはじめてから20分は満腹にならないのです。20分以内に食事を終えてしまうと、満腹中枢が刺激されていないので、なんとなくお腹が減っているように感じてしまいます。つまり、「早食い」。「早食い」は「大食い」につながるということです。大食いをすれば当然カロリー過多になります。食事時間を20分以上かけるようにすると噛む回数が増え、脳内のセロトニンが増えて不安感やイライラが軽くなるので一石二鳥です。

噛まない人は太っている?

食事をしっかり良くかむと食事時間が長くなります。国立健康・栄養研究所などの研究グループが、全国の女子大生を対象に実施した調査によると、身長・体重・食事の内容・生活習慣について聞くとともに、食べる速さを「とても遅い」「比較的遅い」「普通」「比較的速い」「とても速い」の5段階で自己申告してもらいました。その結果、「とても速い」と答えた人の平均体重は55.4キロ、「とても遅い」と答えた人は49.6キロで、なんと5.8キロも差があったのです。

固い・大き目カットの食品がおすすめ

噛む回数を増やすには、ごぼうやレンコン、セロリのようにもともと固い食品を食べることのほか、野菜スティックのように大きめにカットすれば自然に噛むことを促します。また、ガムは噛む回数を増やすのに最適です。味がわからなくなるまでシッカリと噛みましょう。

その3 睡眠

 男性ホルモンは熟睡中に分泌されます。ですから、男性の更年期障害の予防と治療には熟睡と睡眠時間の確保が欠かせません。また、男性ホルモンは朝に高くなるのですが、寝不足だとホルモン量が低いまま上がらず、1日がつらくなってしまいます。

 睡眠には、疲労回復とストレス解消の両方の効果があります。症状として疲れやすさ、イライラがある場合、睡眠による解消効果が激減してしまいます。

寝酒はダメ

 不眠を感じて寝酒をする人がいますが、これは間違いです。飲酒するとウトウトと眠りを誘います。しかし、人はアルコールに対応する力があるので、徐々に眠くなるまでの飲酒量が増えてしまいます。過ぎた飲酒は肝臓を痛める原因となり、また、飲酒によってもたらさせた睡眠は質が悪いものです。飲酒は熟睡を妨げるのですが、熟睡中に男性ホルモンが分泌されるのです。しかも飲酒の影響を受けて睡眠中に途中で起きてしまうことがあり、二度寝したときは熟睡が出来ません。また、予想外に早く目覚めてしまうこともあり、睡眠時間が確保できないデメリットがあります。どうしても眠りにくい時は、お酒に頼らず、医師に相談してみましょう。

夕食は消化のよいものを

 睡眠を促すためには、夕食に油っこい食事をしないこと、寝る時間の2〜3時間まえに食事を終えておくことも大切です。油こい食事は、消化に時間がかかるので、睡眠中にも胃腸が消化吸収に動き続けてしまうので熟睡を妨げてしまいます。また、カフェインの多い飲料(コーヒーや紅茶、コーラ、玉露、栄養ドリンク類)は、眠気を吹き飛ばしてしまいます。カフェインの効果は個人差が大きいものですが、寝る時間の2時間前までにしておきましょう。

スマホよりも読書、入浴、音楽

 スマホやパソコンの画面にはブルーライトという脳を冴えさせてしまう光が入っています。寝る前には操作せず、テレビを見る程度にしましょう。寝るために最も効果的な時間の過ごし方は読書や入浴、好きな音楽を静かに聴く、というものです。

その4 ストレスを溜めない〜ゲームをうまく利用する

 

 ストレスは、男性ホルモンを作る能力を落としてしまいます。ですから、ストレスを溜め込まないようにするためには、これまで紹介した「運動」や「睡眠」は非常に効果があります。

 運動にはストレス解消効果とともに、気持ちを明るくする働きもあります。ゆううつな気持ちであっても、前向きに考えが変わっていきます。しかも肉体が疲労しているために熟睡を呼び込みやすく、睡眠によるストレス解消効果が得やすくなります。また、テニスやゴルフ、サイクリングなど仲間とプレイすることで、楽しい時間が生まれると同時に「ちょっとした競い合い」が起きます。ライバルといった厳しいものでなく「勝ったり負けたり」「ほんのすこし勝敗がついた」程度がちょうど良いのです。ささやかな勝負が男性ホルモンの分泌を促します。スポーツは男性ホルモンの分泌を促し、症状を軽くすることに最適ですが、難しい場合もあります。そんな時は、囲碁や将棋などのゲームで勝敗をつけるのも良いです。

 インターネットを通じて対戦できるようなゲームを利用するのも良いでしょう。ゲームにはストレス発散効果があります。また、若い頃を思い出してギターを弾いたり、カラオケで熱唱するとストレス発散効果があります。楽器は新たな趣味として習い始めるのも1つの方法です。

 例えばエレキギターやボーカル教室など、レッスン曲が自分の好きな洋楽やアーティストの曲で入門ができるクラスも増えています。習い始めは上手くいかなくて逆にイライラするのでは?と考えてしまいがちですが、1曲でも出来るようになると達成感が高く、大きなストレス発散効果があるのです。チャレンジする精神も男性ホルモンの分泌に一役買います。

最後に

 認知度が高まったとはいえ、なかなか「男性の更年期障害」を理由に体の不調を堂々と訴えづらいことも現実です。やはり周囲の理解が大切であり、それが治療の一歩です。

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