2ロコモは要介護の原因No.1

『歳だから』ではない!

 ひざや腰、股関節など、痛みをともなう運動器の疾患はロコモの初期として比較的、気付きやすいでしょう。それなのに、「歳だから仕方ない」と見過ごし、最終的に手術を必要とするほど悪化させてしまう例も少なくないといいます。疾患として認識し、きちんと治療しなければロコモが悪化してしまいます。中でも、もっとも注意が必要なのは、自覚症状がない骨粗鬆症だと大江先生は警告します。

 「骨粗鬆症になると骨が弱くなり、ちょっとしたことで折れてしまいます。たとえば、転んだときに手をついただけで手首の骨が、転んだだけで太ももの付け根(大腿骨)が折れてしまったりします。また、立った高さより低い高さから尻もちをついただけ、新聞紙を資源ごみに出しただけ、雑草を思い切って引き抜いたりしただけでも、背骨がつぶれて折れてしまうこともあるのです。

 今、いちばん多い骨折は大腿骨の付け根の骨折で、年間何万件も起きています。骨が折れたら、私たち整形外科医はギプスで固定したり手術をしたりして治します。骨はもろくなっていてもつくのですが、骨が弱くなった状態はなかなか治りません。そのため、1カ所折れるとまた骨折が起こります。骨粗鬆症で骨折を起こした人は、別のどこか2カ所目が折れる確率が何倍も上がるということが、研究でもよく知られています。

 骨粗鬆症による骨脆弱性骨折には起きやすい年代があり、最初は女性の50代くらいから手首の骨折が起こってきます。次は60〜70代で背骨の骨折、そして80代で大腿骨の骨折。それが次々と起こるのでとても大変です。」(大江先生)

骨粗鬆症の怖さ

●骨の強度が落ちて、ささいなことで折れてしまう

●骨折しても治れば痛みはなくなるので、自覚症状がなくなり放置してしまいがち

●1度骨折すると、骨折する確率が上がるため、2カ所目、3カ所目と骨折を繰り返す

生涯自立して生活するために

 日本人の平均寿命は女性は86歳、男性も80歳を超えました。しかし、健康上の問題なく日常生活を送れる『健康寿命』との間には男性は約9年、女性は約12年という大きなギャップが生じています。(図2
 厚生労働省の調査「国民生活基礎調査」で要支援・要介護になった主な原因をみると、数年前までは脳卒中がもっとも高い割合を占めていました。しかし、最新データでは、関節疾患、骨折・転倒、脊髄損傷という運動器にまつわる3つの理由を合わせると約25%になり、脳血管疾患を超えてトップになりました。(図3)支援や介護を必要とする方の4分の1が、運動器の障害で健康寿命を縮めているというわけです。

図2 平均寿命と健康寿命の差

図2 平均寿命と健康寿命の差

※平均寿命は厚生労働省「完全生命表」(平成22年)、健康寿命は、厚生労働科学研究費補助金「健康寿命における将来予測と生活習慣病対策の費用対効果に関する研究」(平成22年)より。

図3 要支援・要介護になった原因

図3 要支援・要介護になった原因

※厚生労働省「国民生活基礎調査」(平成25年)より。

あなたは大丈夫? ロコモをチェック

ロコモチェック

 7つの簡単な質問があります。いつも当てはまるものがあればチェックしてみてください。

□片脚立ちで靴下がはけない

□家の中でつまずいたりすべったりする

□階段を上がるのに手すりが必要である

□家の中のやや重い仕事が困難である

□2キロ程度(1リットルの牛乳パック2個程度)の買い物をして 持ち帰るのが困難である

□15分くらい続けて歩くことができない

□横断歩道を青信号で渡りきれない

※日本整形外科学会公認 ロコモティブシンドローム予防啓発サイトより。

  いかがでしたか?
 もし1つでも当てはまればロコモの心配があります。適切なトレーニングを始めましょう。
 次回、その②では、さらに詳しいロコモ度診断と、予防・対応方法について掲載します。

ロコモについてのさらに詳しい知識や『ロコモーショントレーニング』についての情報は

日本整形外科学会公認 ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイト
『ロコモチャレンジ!』
 https://locomo-joa.jp/

をご覧ください。

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