2遠距離介護が始まったら
利用できるサービスはたくさんある
遠距離での親の見守りが始まり、介護のことを考えると不安要素ばかりのように感じるかも知れませんが、公的介護保険制度を中心に頼れるサービスもたくさんあります。まずは①地域包括支援センター ②社会福祉協議会 ③保健所 といった公的な窓口で相談するとよいでしょう。
公的な福祉サービスの窓口
①地域包括支援センター
高齢者が住み慣れた地域で生活できるよう、必要な介護サービスや保健福祉サービス、その他の日常生活支援などの相談に応じてくれる。社会福祉士・保健師・主任ケアマネジャーといった専門職が、総合相談、介護予防、サービスの連携・調整などの業務を行う。
②社会福祉協議会
高齢者が日常生活を営むのに必要なサービスを利用するための情報提供、サービス利用の支援といった「日常生活自立支援事業」を行っている。福祉サービスの利用援助、住宅改造などの援助、行政手続きに関する援助などのほか、特に、日常的金銭管理を頼めるのが特長。
③保健所
認知症や病気など、健康に関することについて情報提供を行う。
【ポイント】
地域によって提供されるサービスの内容も異なるため、早い段階で親の居住地域の自治体に電話で資料請求すると良いでしょう。
その他、介護や見守りにまつわるさまざまなニーズに応じた民間サービスも見つけることができます。
本人にも家族にも役立つ各種サービスの例
●安否確認サービス
大きく分けて「見守りサービス」と「緊急通報サービス」の2種類がある。
親の異変に気付くよう、電気ポットやガス、水道、万歩計、携帯電話などの使用情報を離れて暮らす子どもに知らせるのが「見守りサービス」。
「緊急通報サービス」は、一般的にペンダント型の押しボタンを身につけておき、苦しくなった時などに押すと通報されるしくみ。自治体で無料提供される場合もある。ホームセキュリティ会社が防災や防犯と組み合わせて提供する有料の見守りサービスも。
●食事宅配サービス
食事や食材を家に届ける、行政・民間によるサービス。行政の場合は一般的にお弁当が多く、頻度は地域によりまちまち。お弁当に飽きてしまったら食材宅配に切り替えて味付けを自分でするなど、使い分けを。
●介護用品のレンタル
車いす、介護用ベッドなどは、介護認定の度合いによって公的介護保険制度を利用して安く貸与を受けられる場合も(原則、費用の1割を自己負担※)。これに該当しない場合も、民間のレンタルサービスも多数。症状の変化で不要になった場合の処分の心配もなくなる。
※2015年8月から一定以上の所得がある方は2割の自己負担になります。
●洗濯代行サービス
入院の際に、家事代行サービスで洗濯をアウトソーシングすることも可能。洗濯物だけのために家族が病院に通う面倒がなくなります。
●航空運賃の介護割引
各航空会社が設定する介護目的の航空路線の割引制度。要支援・要介護と認定された人の家族などが利用でき、割引率は会社などにより異なるが、最大40%程度の割引も。早割と違い当日までキャンセル可能というメリットがあり、帰省頻度が増した際の金銭的負担を軽減。
●マイホーム借り上げ制度
親が施設に入居した際などに空いた家を賃貸できるサービス。シニアの所有する家を「一般社団法人移住・住みかえ支援機構」が定期借家契約で借り上げ、子育て世代に転貸するもの。「第二の年金」とも言われ、安定収入を得られる制度。
【ポイント】
どんなサービスがあるのか、情報を集めることが第一です。でも、インターネット上の情報は玉石混交。口コミなどをうまく使って見極めてください。また、サービスを実際に利用するのは親なので、価値観を押し付けすぎない方がよいでしょう。
頑張りすぎは禁物
ここまでに見てきた介護予防、介護サービスはすべて、親も子も楽をするための対策といえるでしょう。太田さんは、「子どもがまず自分を守ることが大切」ということを強調します。最後に、遠距離介護の心得について、アドバイスをいただきました。
太田さんからアドバイス
「みなさんにお伝えしているのは、『抱え込まないで』ということです。ひとりで頑張りすぎてしまい、『うつ』を発症してしまう方も多く見受けられます。でも自分が体を壊せば、親の介護ができないばかりか自分も誰かの支えが必要になってしまいます。まずは自分の健康を考えるべきです」。
●抱え込んで無理をしないこと
できるだけ公的介護サービスを利用し、親の介護には基本的に自分のお金でなく基本的に親のお金を使いましょう。親族でもめ事が起こるとそれも負担になるので、トラブル予防のためにも、いつ何にいくら使ったのか『介護家計簿』をつけてください。お金を立て替えた場合も、この家計簿を基に相続の際に精算することもできます。
●息抜きは悪いことではありません
介護が始まってからは頻繁に通うようになり疲弊してしまいますから、お金が尽きないとわかっていればグリーン車を使うのも良いと思います。極端な例ですが、それで1回でも多く行けるなら、生きたお金の使い方です。さらに、遠方ならビジネスパックのほうが安い場合もあります。ホテル1泊もついてくるので、1泊は実家に、もう1泊はホテル泊にするだけでも、息抜きになるでしょう。
介護者は遊んではいけないと思っている方は多いです。でも、パオッコの会員さんを見ていると、遠距離介護で大変でも、容体が安定している時に旅行に行くなど、上手にリフレッシュしている方はたくさんいらっしゃいます。自分のことを最優先にして良いのだということを忘れないでください。自分が健康であってこそ親の介護ができるのです。
今回お話を伺ったのは…
NPO法人 パオッコ 〜離れて暮らす親のケアを考える会
http://paokko.org/
※遠距離介護に関するさまざまな情報を発信しています。
理事長 太田差惠子さんの著書
「70歳すぎた親をささえる72の方法」
(かんき出版、1,470円(税別))
別居する親を心配する方へ助けとなる知恵とサービスを紹介しています。
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