2METsを意識して日々の生活をよりアクティブに

この活動は何METs? 理想は何METs?

 私たちが行う、様々な生活活動をMETsで示した表が下記になります。これを見ると、掃除機をかけたり、お風呂掃除といった日常の行動が約3METsあることが分かります。安静時に比べて、3倍の代謝量があると考えると、日々の動きを少しでも増やそうと思いませんか?

表1 生活活動のMETs表

METs 生活活動の例
1.8 立位(会話、電話、読書)、皿洗い
2.0 ゆっくりした歩行(平地、非常に遅い=53m/分未満、散歩または家の中)、料理や食材の準備(立位、座位)、洗濯、子どもを抱えながら立つ、洗車・ワックスがけ
2.2 子どもと遊ぶ(座位、軽度)
2.3 ガーデニング(コンテナを使用する)、動物の世話、ピアノの演奏
2.5 植物への水やり、子どもの世話、仕立て作業
2.8 ゆっくりした歩行(平地、遅い=53m/分)、子ども・動物と遊ぶ(立位、軽度)
3.0 普通歩行(平地、67m/分、犬を連れて)、電動アシスト付き自転車に乗る、家財道具の片付け、子どもの世話(立位)、台所の手伝い、大工仕事、梱包、ギター演奏(立位)
3.3 カーペット掃き、フロア掃き、掃除機、電気関係の仕事:配線工事、身体の動きを伴うスポーツ観戦
3.5 歩行(平地、75〜85m/分、ほどほどの速さ、散歩など)、楽に自転車に乗る(8.9km/時)、階段を下りる、軽い荷物運び、車の荷物の積み下ろし、荷づくり、モップがけ、床磨き、風呂掃除、庭の草むしり、子どもと遊ぶ(歩く/走る、中強度)、車椅子を押す、釣り(全般) 、スクーター(原付)・オートバイの運転
4.0 自転車に乗る(≒16km/時未満、通勤)、階段を上る(ゆっくり)、動物と遊ぶ(歩く/走る、中強度)、高齢者や障がい者の介護(身支度、風呂、ベッドの乗り降り)、屋根の雪下ろし
4.3 やや速歩(平地、やや速めに=93m/分)、苗木の植栽、農作業(家畜に餌を与える)
4.5 耕作、家の修繕
5.0 かなり速歩(平地、速く=107m/分))、動物と遊ぶ(歩く/走る、活発に)
5.5 シャベルで土や泥をすくう
5.8 子どもと遊ぶ(歩く/走る、活発に)、家具・家財道具の移動・運搬
6.0 スコップで雪かきをする
7.8 農作業(干し草をまとめる、納屋の掃除)
8.0 運搬(重い荷物)
8.3 荷物を上の階へ運ぶ
8.8 階段を上る(速く)

資料:厚生労働科学研究費補助金(循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業)
「健康づくりのための運動基準2006改定のためのシステマティックレビュー」(研究代表者:宮地元彦)より

 また、私たちは1日どれぐらいのMETsを目安に生活活動を行えばよいのでしょうか?
 下記の表2を見てください。18〜64歳であれば、3METs以上の身体活動を23METs・時/週行うこととされています。具体的には、上記のMETs表(表1)で3METsとあった歩行(またはそれと同等以上の強度の身体活動)を毎日 60 分行うことが理想になってきます。
 さらに、表3は体力の目安を示したもので、60〜69歳であれば、男性だと9METs、女性であれば7.5METsの体力を持つことが望ましいとされています。この数値の活動を3分間持続できた時に、その能力があると判断できます。つまり、「階段を上る(速く)」であれば、これを3分間継続できた時に8.8METsの基準をクリアできたことになります。3分間継続するというのは、想像以上に大変です。だからこそ、様々な活動の積み重ねが大事ともいえます。

表2 個人の健康づくりのための身体活動基準

身体活動(生活活動+運動) 運動
  強度 週当たりのMETs・h 強度 週当たりの
METs・h
18〜64歳 ≧3 METs ≧23 METs・h
〈歩行又はそれと同等以上の強度の身体活動を毎日60分〉
≧3 METs ≧4 METs・h
〈息が弾み汗をかく程度の強度の運動(ボウリング・ゴルフ等)を毎週60分〉
65歳以上 <3 METsも含む ≧10 METs・h
〈強度を問わず、身体活動を毎日40分〉
生活習慣
病患者等
  3〜6 METs ≧10 METs・h
〈歩行又はそれと同等できついと感じない程度の30〜60分の運動を週3回以上〉
備考 十分な体力を有する高齢者は、3METs以上の身体活動を行うことが望ましい 全年齢層で、運動習慣をもつことを推奨

資料:健康づくりのための身体活動基準2013より

表3 体力(うち全身持久力)の基準

〈性・年代別の基準〉

下表に示す強度での運動を約3分以上継続できた場合、基準を満たすと評価できる。

年齢 18〜39 歳 40〜59 歳 60〜69 歳
男性 11.0METs 10.0METs 9.0METs
女性 9.5METs 8.5METs 7.5METs

資料:健康づくりのための身体活動基準2013より

METsの数値が高い、「階段」は効果的!

ご紹介したMETs表のなかでも、一番数値が高かった「階段を上る(速く)」。階段なら普段もよく上っている、という人はどれだけいるでしょうか。エスカレーターやエレベーターが普及したことで、階段を使う人は減少してきています。河村先生いわく、日常生活にある「楽な方をとるか、それとも少し疲れる方をとるか」という、ちょっとした選択肢のなかで、意識的に大変な方、疲れる方を選択していくことが、健康維持の秘訣だそうです。
 実際に、階段昇降時の酸素消費量を表した下記の図を見てみましょう。特に、上り時、速く上れば上るほど、カロリー消費量もぐんと上昇。いかに階段が、効率のいい身体活動であるかが分かるかと思います。運動となると、二の足を踏んでしまう人も、まずは階段を積極的に利用する、ということを日々の生活に取り入れてみてはいかがでしょうか?また、足が悪い人であれば、座りながら足踏みするだけでも2〜3METs程度の効果があるようです。

図4 階段昇降時の酸素消費量

図4 階段昇降時の酸素消費量

資料:知的クラスター創成事業「仙台サイバーフォレスト構想」(インテリジェントモニター)
研究報告書(東北大学 猪岡 光教授)より

身体活動を通して、人とつながる!

厚生労働省では「健康づくりのための身体活動基準2013」とともに、「健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイド)」を提唱しています。そこでは「いつでもどこでも+10(プラステン)」というキャッチフレーズで、今よりも10分多く体を動かすことを推進しています。
 この指針について河村先生は、毎日プラス10分ずつの活動を積み重ねていくことで、最初は目標達成のため、健康のため意識的にはじめたことが、いつしか楽しみに変わり、習慣化され、(活動の場で会う)あの人に会いたいから行こう、といった人同士の交流にもつながっていくと言います。高齢になるほど社会交流の場が減るなかで、こうした取り組みは健康維持だけでなく、生きる目標にも。また何より、意欲的に身体活動を継続するカギ!でもあります。事故やケガには注意しながら、METsを取り入れて、毎日をアクティブに過ごすことを心がけてみてはいかがでしょうか。

身体活動を通して、人とつながる!河村孝幸先生 東北福祉大学 健康科学部 医療経営管理学科准教授 今回お話を伺ったのは…
河村孝幸先生
東北福祉大学 健康科学部 医療経営管理学科准教授
心臓リハビリテーション指導士
健康運動指導士

東京学芸大学教育学部卒業後、米国ウィスコンシン大学大学院で運動・スポーツ科学心臓リハビリテーション専攻修士課程を修了。東北大学大学院、医学系研究科 障害科学専攻博士後期課程修了。 現在は東北福祉大学で教鞭をとる傍ら、中高年者に向けての運動効果の啓発や実践指導などを積極的に行う。また、同大学の開催する「仙台元気塾(http://www.tfu-ac.net/yfkc/genki/index.html)」でも講師を務めている。

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