HOME ≫ トピックス ≫ 好評連載『飽くなき者たち』を語る 〜時代の変化を映す役者の生き様を巡って〜 ≫ ⑤ 終わらない、役者たちの飽くなき挑戦

好評連載『飽くなき者たち』を語る
〜時代の変化を映す役者の生き様を巡って〜
終わらない、役者たちの飽くなき挑戦

編集者 俳優の生き方やその作品に時代というものが照射されているということからして、この連載には、映画の歴史、邦画史みたいなものが織り込まれているということも言えますね。

草笛光子

執筆者 それは意識しているところもあります。たとえば草笛光子の回では、「第1作がヒットすればシリーズ化され、次々と続編が製作されるという映画の黄金時代がかつてはあった」として、東映には高倉健の『昭和残侠伝』や『網走番外地』、大映には勝新太郎の『座頭市』や『兵隊やくざ』、日活には小林旭の『渡り鳥』をはじめとする『無国籍』、そして東宝には森繁久弥の『社長シリーズ』があったという紹介を導入にしています。そして、その『社長シリーズ』に常連として出演してきた草笛光子の近作に至るフィルモグラフィーを通して、邦画の歴史の1頁を浮き上がらせている。こうした構成は、濃淡はあれ毎回共通していると言いますか、通底していると思います。


富司純子

 富司純子は、「藤純子」として60年代から70年代初頭にかけて仁侠もので一世を風靡しました。全盛期の1972年に引退して、17年後の1989年に「富司純子」に改名して『あ・うん』で映画復帰します。あのまま消えてしまう道もあるわけですが、40代で復活したら、長生きすれば70代・80代も演じていくことになる。さっきも言ったように、役者の生き方が昔とまったく違ってきているんですね。そのところを書くことになるわけです。単なるノスタルジーであれば、かつての「緋牡丹のお竜」の話をずっと書けばいい、あれは素晴らしかったって。素晴らしかったですよ、本当に。それを懐かしがって終わったらいい。ところが、中年で復帰して、いまはもう老いた自分の姿をさらけ出す。


編集者 『フラガール』であの芝居を見せるわけですよね。

吉行和子
吉永小百合
倍賞美津子
小林薫
桃井かおり
桃井かおり
高倉健

執筆者 ああいうパターンは一昔前からしたら、どちらかというと珍しいんですよね、役者を続けるんだとしたら、全盛期の蝶よ花よの時代から、脇を固めるといわれる役へ回って、若い俳優が演じる主役を見守る美しい母親役とか重鎮みたいな老人役とか、そういうので終えていた。もしくは、もう出ない。女優は特にね。もう美しくないから出ない、出るならシワを隠す。でもいまは、そのあとがあるんですよ。吉行和子が面白いのは、80歳を超えても主演を張っているんですね。若づくりをしてじゃなくて、老いたままのド直球で主演を張る。吉永小百合みたいにいつまでもきれいで年齢を感じさせない女優に対し、吉行和子や倍賞美津子なんかは、シワを隠さず、老いた先というものを演じてみせる。そういう時代になってきていますよね。そこを書いているつもりなんですよ。


編集者 老いた先を演じてみせるためには、その前ですね、中年期にどう挑んでいるかということも問われてくる。世阿弥がいうところの「時々の初心忘るべからず」ですね。俳優人生でいうと、脂が乗ってくるみたいなところ。


執筆者 そう。中堅のときにチャレンジしておかないと、老後はないぞという面もありますよね。だから、脂の乗ったところに焦点を当てて書いている回もあるんです。小林薫はまさに脂の乗った時期の『秘密』をクローズアップして「小林薫が挟まれている」と書いたんですね。そして、60歳を超えたところでの『夏の終り』でも相変わらず素晴らしい挟まれっぷりを演じている。「時々の初心忘るべからず」があったからこそだと思いますよ。桃井かおりもそう。中年期、「時々」のあたりの『疑惑』を取り上げました。桃井かおりは、アンニュイでコケティッシュ、ニュータイプの女性のイメージで来たけれども、それはいつか終わるということも自身わかっているわけですね。だから、中年期に差しかかる前のところで、あの悪女の役を徹底的につくり込んだ。なればこそ、いまの桃井かおりがある。これも「時々の初心忘るべからず」ですよね。


編集者 『疑惑』で言えば、桃井かおりと岩下志麻。『死の棘』で言えば、松坂慶子岸部一徳。この連載に登場した俳優の共演を言い出したらキリがないですね。もう、この面々ですから。高倉健倍賞千恵子の『駅 STATION』とか。


執筆者 別々の回で同じ作品を取り上げたことも当然ありますね。クロスオーバーしてくる。そこがまたね、面白い。曼荼羅みたいになっていくんですよ、男優と女優と作品、これに監督とか時代とかが絡んできますから、非常に華やかな邦画曼荼羅みたいになっていくんじゃないかと。そうなるように、これからも頑張って書いていきたいと思っています。


編集者 取り上げている作品は、いまはレンタルDVDなどで比較的簡単に観ることができますから、読者の皆様には近作でも過去の作品でもなんでも是非ご覧いただければと思います。そして、この連載『飽くなき者たち』を今後もご愛読くださいますよう、よろしくお願いします。

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