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掲載:2017年3月15日

認知症の親を法的に守る 〜成年後見制度って何だろう?〜

 

 「亡くなったお父さんの遺産分割の協議をしたいのだけど、お母さんが認知症で子どもの私たちとの間で話を進められない」「認知症の親の介護費用に充てるため、本人の預金を取り崩すことを考えている。親に代わって財産管理をできないか」――このようなケースで、判断能力が不十分な人の代理人となって法的な援助を行うのが「成年後見人」です。成人であれば年齢を問わず援助を受けることができますが、高齢者が増加する中で認知症の人の財産を守るしくみとして注目を集めており、国では制度の普及に努めています。
 ただ一方で、気軽に利用できる制度ではないことにも注意が必要です。保護される人本人の権利行使を制限することがあるため、法律に則った手続きと家庭裁判所の判断が求められます。また、制度の趣旨を理解して利用しないと希望に沿わない結果が生じることもあり、不満を理由に申立てを取り消すことはできません。制度の活用法を、司法書士・行政書士の田中陽平さん(アリスト総合事務所)に伺いました。

田中さん

田中 陽平(たなか ようへい)さん

プロフィール
平成13年、東洋大学哲学科を卒業後、同年に行政書士、平成15年に司法書士の資格を取得。平成26年にアリスト総合事務所を設立。数多くの案件を手掛けながら、成年後見人としても活動している。なお、アリスト総合事務所の「アリスト」とは、ギリシャの哲学者アリストテレスに由来する。

成年後見人、どんなときに必要?

認知症、でも法律の手続きを求められたら?

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 認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力が不十分な成人を対象に、家庭裁判所が、代理人である「成年後見人」を選任して「法的」な援助・保護を行わせるのが成年後見制度です。実際には、援助を受ける人の判断能力の程度に応じて、①後見、②保佐、③補助の3種類の援助があります。①が最も症状が重い人(認知能力の低い人)を対象にしており、与えられる権限も最も広くなります(「成年後見制度の概要」参照)。いずれかを選択して申立てを行うことになりますが、最終的には家庭裁判所が状況を判断して適切な類型を決定します。
 医療や介護のケア、また日常生活の世話などの援助であれば私たちにもなじみがありますが、「法的な」援助とはどのようなことをいうのでしょうか。ここでは、高齢者が対象となるケースを具体的に見てみましょう。

■事例1 遺産分割協議のケース

 父親が亡くなり、高齢の母親と子どもの間で遺産分割の協議が必要になった。しかし、母親は認知症が進んで判断ができないため、相続の話合いを進めることができない。

家庭裁判所は、弁護士を母親の「保佐人」に選任し、遺産分割についての代理権も付与。弁護士には、遺産分割も含む保佐人としての業務に当たってもらうことになった。

■事例2 財産管理のケース

 物忘れが激しくなった父親と娘の2人暮らし。父親は自宅で転倒して足を骨折し、手術を受けた後に介護老人保健施設に入所することになった。今後、さらに介護が必要になることから、娘は父親の預金をその費用に充てたいと考えているが、父親は自分で判断して手続き行うことができない。

娘は預金口座がある銀行に相談。成年後見制度の利用を勧められ、家庭裁判所に申立てを行った。法律の専門家が「後見人」として選任され、父親の財産管理について検討を開始した。

■事例3 契約解除のケース

 息子が日中仕事に出ている間に、母親が必要のない高額商品をいくつも購入してしまった。認知症の症状が出始めた母親をねらった悪徳商法だと思われるが、本人の状態を考えるとまた騙されてしまうかもしれない。もしもの場合は、息子が解約の手続きをできるようにできないか。

家庭裁判所の審理の結果、息子が「補助人」に選任され、併せて10万円以上の商品を購入することについて同意権が与えられた。以後、母親が、息子の同意なく10万円以上の商品を購入したときには、息子が契約を取り消せることになった。

 法律上の問題について自分で判断し、手続きを行う必要があっても、判断能力が十分でないために不利益を被ってしまう。このようなとき、本人保護のために代理人として法的な手続きを行うのが成年後見人(保佐人、補助人)です。援助の内容は法律行為に限られ、日常生活に関する行為は対象とならないのが特徴です。
 「認知症の方でも、日常生活の場面では後見人の援助がなくても暮らしていけます。後見人が必要になるのは、ご本人が法律行為を求められるとき、つまり、人生の大きなイベントが起こるときです。具体的には、不動産などの財産の処分、遺産分割協議、預貯金を解約して施設に入所したり福祉サービスを受けたりするための契約を結ぶこと、保険の受取りなどが想定されています。」(田中さん)

■成年後見制度の概要

  後  見 保  佐 補  助
対象となる人
(本人)
判断能力が
まったくない人
判断能力が
特に不十分な人
判断能力が不十分な人
申立てができる人 本人、配偶者、四親等以内の親族(親や子、孫などの直系の親族をはじめ、兄弟姉妹、おじ、おば、甥、姪、いとこ、配偶者の親・子・兄弟姉妹など)
成年後見人等が
同意・取消し可能な行為
日常の買い物などの生活に関する行為以外の行為 重要な財産関係の権利を得喪する行為等(民法第13条1項記載の行為) 申立ての範囲内で裁判所が認める行為(民法第13条第1項記載の行為の一部に限る。本人の同意が必要)
成年後見人等に与えられる代理権 財産に関するすべての法律行為 申立ての範囲内で裁判所が認める行為(本人の同意が必要) 申立ての範囲内で裁判所が認める行為(本人の同意が必要)
(横浜家庭裁判所の資料を一部改変)

後見人になるのは家族? 専門家?

 では、後見人になれるのはどのような人でしょうか。本人の世話やお金の管理をしているのは家族であることが多いので、「家族を後見人に」と考えるのが一般的かもしれません。申立ての際には、後見人を誰にするか希望することができ、手続きを行う家族が自分を候補者に指定することも可能です。ただし、最終的には家庭裁判所が総合的に判断して決定するので、必ずしも希望が認められるわけではないことに注意する必要があります。
 提出書類には、後見人候補者の生活状況や親族の意向についても記入することになっており、候補者の経歴、収入や負債の状況、また、後見を受ける人との関係(利益対立)など、内容に応じて家庭裁判所は不適格と判断することがあります。その場合には、弁護士、司法書士、社会福祉士などの法律や福祉の専門家が選任されます。特に、後見を受ける人の財産が高額であったり、親族間で介護や財産管理の方針に大きな食い違いがあったりするときは、専門家が選任されることが多くなります。
 専門家の選任に当たっては、家庭裁判所がこれまでの実績に応じて個別の専門家に依頼したり、弁護士会や司法書士会に推薦を依頼します。なお、現在では、親族以外の専門職の第三者が成年後見人に選ばれるケースが過半数になっているといいます(横浜家庭裁判所調べ)。
 「家庭裁判所は、家族や親族の希望にかかわらず、第三者である専門家を選任することがあります。すると、これまで親の預貯金を管理してきた子どものもとに後見人がやって来て、『通帳を引き渡してください』などと言われることもあります。このとき、子どもは後見人の言葉に従うこととなります。申立人である家族・親族と後見人の間でトラブルになることがあるので、しっかり考えて利用することが必要です。」(田中さん)

後見人の報酬は?

 さて、家族や親族以外の人に後見人を頼むとなれば、その費用が気になります。成年後見人には、後見を受ける人の財産から報酬が支払われることになっていますが、これは、後見人が家族・親族であっても、専門家であっても同様です(家族・親族の場合は無報酬としてもかまいません)。
 金額は法律で決まっておらず、管理する財産の内容やその額によって裁判官が判断します。個々のケースについて一般には公表されていませんが、東京家庭裁判所が示している目安によれば、通常の場合で月額2万円程度。管理財産が複数ある場合や高額になると手間もかかるため、財産額が1,000万円超〜5,000万円以下の場合は月額3万〜4万円、5,000万円超の場合は5万〜6万円としています。

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