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介護
掲載:2016年7月15日

進む介護予防 〜介護予防・日常生活支援総合事業② 八王子市

 

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八王子市役所。入口前のブロンズ像「平和な朝」

 介護保険制度の要支援の「介護予防訪問介護」と「介護予防通所介護」が市区町村の「介護予防・日常生活支援総合事業」(以下「総合事業」)に移行されることに対して、「これまでのサービスが受けられなくなる」「サービスの質が下がるのではないか」といった不安の声も出ています。しかし、総合事業に移行する狙いは地域の実情に応じたサービスの提供、地域の支え合いの体制づくりなどを進め、要支援者への効果的・効率的な支援を可能にすること。また、これを機に、サービスを受ける立場である高齢者がサービスの担い手となってまちづくりや地域活動に参加することにもなり、真の意味での介護予防につながるといえます。

 今年3月から順次移行を始めた東京都八王子市も、住民の地域活動の拡大やまちづくりと一体化して総合事業を実施し、元気高齢者を増やしていく考えです。総合事業移行についての現在の取り組み状況や、今後めざすところなどを、福祉部高齢者福祉課の溝部和祐課長、辻野文彦主査、福祉部高齢者いきいき課の吉本知宏課長補佐兼主査に聞きました。

本格移行に向けての取り組み

本格移行に備えて平成28年3月から試行実施に着手

――八王子市では、移行初年度内である今年3月に総合事業に移行したそうですね。

福祉部高齢者福祉課の溝部和祐課長

溝部 早期に移行したほうが、平成29年4月からの本格実施に向けて準備できると考えたため、初年度内で移行しました。新しいサービスは、現在、モデル事業として「試行実施」していく段階です。すべてのサービスを一気に始めるのではなく、整えられるサービスから順次対応していこうという考えで、現在本格実施しているのは現行相当の訪問介護と通所介護のサービスのみです(図1)。また、緩和した基準による「訪問型サービスA」も試行というかたちで実施しています。

 サービスAの利用対象となる方については、地域包括支援センターや事業者、ケアマネジャー、市との会議で判定・抽出しており、現在約30人の方が対象となっています。対象となった方には、予防給付の切り替えのタイミングに市職員が直接出向いてモデル事業の趣旨を説明し、Aのサービス利用にご協力していただけるようお願いしています。そうして、実際にサービスを提供してモニタリングも行い、平成29年度の本格実施につなげていくという考えです。

 住民主体による支援である「訪問型サービスB」と、短期集中予防サービスである「通所型サービスC」は、10月から試行実施する予定です。

 移動支援である「訪問型サービスD」は、需要はあると見込んでいますが、既存の仕組みの中でどう新しいものをつくるのかということで時間がかかると見込まれ、検討中です。

 「介護予防ケアマネジメント」については、学識経験者による検討会を立ち上げて議論しているところです。今年11月ごろにはケアマネジャーも集めた説明会を開いて、平成29年度に本格実施するという予定で動いています。

■図1 八王子市のサービス提供時期

図1 八王子市のサービス提供時期

<八王子市社会福祉審議会高齢者福祉専門分科参考資料より>

――通所型サービスについてはどうなっていますか。

福祉部高齢者いきいき課の吉本知宏課長補佐兼主査

吉本 住民主体による支援である「通所型サービスB」については、今年度から始めるよりも、まずは常設のサロンを市内各地で広げていこうという考えです。八王子市では従前から、地域住民によるサロン活動を支援しており、現在120団体がサロン活動を展開しています。開催頻度は月1〜2回の規模のところが多いですが、うち5団体は常設サロンとして週3回以上開催しています。常設サロンで一般介護予防事業の取り組みをしていただき、そこから住民どなたでも参加できるかたちの通いの場が広がっていくことで通所型サービスBにつなげていければと考えています。ただ、サロンをやる方に対して押し付けのようになってしまってはいけないので、まずは気楽に、ちょっと簡単なところから常設サロンをやってみましょうよというようにしていけたらと考えています。

 先日、常設サロン募集の説明会をしたところ、8団体募集のところに40組くらいの方が来られまして、関心が高いと実感しています。すでにサロン活動をしているけど常設サロンにレベルアップしようと考えている団体や、サロン活動は全くやったことはないけどやってみたいと検討している方もいらっしゃいました。新規の常設サロンは募集と選定を経て、10月から実施する予定です。

利用者や事業者に制度を理解してもらうために

――移行に対して不安を持っている利用者も多いと思いますが、どう対応していますか。

福祉部高齢福祉課の辻野文彦主査

辻野 皆さんが不安として多く口にされるのが、同じサービスが使えなくなるのではないか、ヘルパーさんが変わってしまうのではないか、今までやってもらっていたことの専門性がなくなるのではないかということですね。従来の専門職のサービスに加えて、地域で活動している住民の皆様も担い手となる制度に変わっていくことや、専門的なサービスを受けなくて済むよう自分でできることは自分で行い、それを隣近所に広げて、お互い様の気持ちで支え合っていく意識が大切になるんですよ、といった説明はしているのですが、そこがなかなか伝わりにくい。新しい仕組みでどなたも体験していないことを実施するわけですから、考えを共有するには、まだ時間がかかると思っています。

 また、支援者側も専門職が関与しないことに不安を感じていて、特にケアマネジャーさんは、その方の状態が悪化したらどうしようかとか思われる方も多い。だから、サービス提供側にもご利用者にも、制度の内容をよく説明し、考え方や目的をまず理解していただくことが必要で、その周知は八王子市としてももっと進める必要があるかなと思っています。早期に移行した当初、新しいサービスを「試行期間」としたのも、ご利用者に「サービスを使ってみて自分はどうだったか」というところで制度を理解していただくためでもありますし、サービスを提供する側からしても何か課題はないのかを評価していただくためでもあります。

 また、早期に移行した理由は「住民が自らの地域について考え、活躍していくんだ」という意識を浸透させていくためでもあります。やはり意識の部分を変えていくというのは時間がかかることなので、総合事業に早くから取り組む必要があると考えました。  

――事業者の反応はいかがですか。

溝部 ほかの自治体では、事業者はすべてサービスAを提供する事業者にスライドさせる方針のところもあるようですが、八王子市はそのように強制的にではなく、「できるところは手を挙げてください」というように募集をしました。その結果、訪問型サービスAを提供する事業者として手を挙げたのは、3月1日現在市内に128カ所ある訪問介護事業者のうち5社で、思いのほか手が挙がりませんでした。これでは全市的にサービスAを展開するということは不可能だろうと判断したため、試行実施という形にした面もあります。

辻野 事業者に移行を強制しなかったのは、ほかの自治体とも同様にサービスAの報酬単価は下がるからです。そうなると事業者の運営が立ち行かなくなるのではないかという懸念もありましたので、まずは順次緩やかに受け入れられる環境を作ってからサービスの主軸を移していただこうと考えました。

 事業者の皆さんは、今は様子見をしているところが多いように見えます。資格のない人を雇って教育し、サービスの担い手として活用するというノウハウがなく、人を雇用したはいいが、活用しきれずどうしようかと心配している事業者があるようです。

――研修などを設けて、資格のない人が行うサービスの質を信頼できるものにしていくことも必要でしょうね。

辻野 八王子市としても研修をやっていく必要はあると思っています。研修や人材育成を事業者任せにするのではなく、自治体として研修課程を作って、「この研修を受けた人だから大丈夫だ」とわかるような仕組みを設けてくれるといいんだけど、というご意見は市民からもいただいています。

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