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くらしすとEYE
終活
掲載:2015年11月15日

「死」と向き合う
その① 「人生の最終段階における医療」への取り組み

公益社団法人日本看護協会 担当常任理事 川本利恵子さん
公益社団法人日本看護協会 担当常任理事
川本利恵子さん

 年齢を重ねるとともに、望むと望まざるとにかかわらず、「死」と向き合わなくてはならないことが増えていきます。死は誰にも等しく訪れるものであるのに、日本では長く死を語ることはタブー視されがちでした。しかし現在は、いかに生を全うし、納得する形で死を迎えるかを大切にする医療が始まっているといいます。医療現場での取り組みの実態を、公益社団法人日本看護協会の川本利恵子さんに伺いました。

「人生の最終段階における医療」とは?

「終末期医療」という言葉はもう使わない

 「終末期医療」という言葉をご存知の方は多いでしょう。そしてそこには『不治の病と宣告されて治療を諦め、残された人生の"終末期"を、抱いていた夢を叶えながら穏やかに暮らす…』というようなテレビドラマの1シーンのイメージがセットになっているのではないでしょうか。しかし、たとえ重い病気に罹ってしまったとしても、どこからが人生の"終末期"と線を引けるのでしょうか? また、年齢を重ねて人間としての自然な死に向かい、人生の終わりにさしかかった方たちには、ケアは必要ないのでしょうか?

 このような議論を経て、厚生労働省は、平成27年3月から「終末期医療」という言葉の使用から、『人生の最終段階における医療』という言葉への切り替えを決定しました。これは、最期まで尊厳を尊重した人間の生き方に着目した医療を目指すことが重要であるという考え方によるものです。そして、この考え方に従い、人生の最終段階を迎えた患者自身・家族と医療従事者が話し合い、患者にとって最善の医療とケアをするしくみづくりを進めています。

厚生労働省の取り組み①
「人生の最終段階における医療の決定プロセスにおけるガイドライン」制定

<概要>

1) 人生の最終段階における医療とケアのあり方について

 医師など医療従事者から適切な説明がなされ、それに基づいて話し合いを行って患者本人の意志決定を基本としたうえで、医療を進めることが原則。医療行為の開始・不開始や変更、中止などは医療・ケアチームの慎重な判断により行われる。可能な限り痛みやその他の苦痛を緩和し、患者と家族の総合的な医療とケアを行う。

2) 人生の最終段階における医療とケアの方針決定プロセスについて

 患者の意思が確認できる場合は本人の意思決定を基本とし、できない場合は家族が推定できる意思を尊重、どちらもできない場合は患者にとっての最善を考えた検討を行う。患者・家族と多専門職種から構成される医療・ケアチームが十分に話し合い、治療方針を決定する。

※平成19年に「終末期医療における医療の決定プロセスにおけるガイドライン」としてスタート。平成27年3月に「人生の最終段階における医療の決定プロセスにおけるガイドライン」と改訂。
※詳細は厚生労働省ホームページにて確認できます。
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000078981.pdf

厚生労働省の取り組み②
「人生の最終段階における医療における医療体制整備事業」実施(平成26年、平成27年)

<概要>

 平成27年は5カ所のモデル医療機関で患者の人生の最終段階における医療に係る相談に乗るケアチーム(医師、看護師、MSWなど)を配置し、適切な体制のあり方を検討する。

※事業の詳細、資料は「国民長寿医療研究センター 在宅医療連携部」ホームページに掲載されています。 (http://www.ncgg.go.jp/zaitaku1/index.html

 

治療を自分で決める時代

 前述のような考え方の変化の背景には、医療の進歩があるといいます。
「例えばがんの場合、30〜35年くらい前には、治療法も少なく、がんという病名が死を意味することになったため、病名を告知しない風潮でした。でも、治療法も進歩してきましたし、がんの5年生存率は以前に比べて少しずつですが高くなっています。(※図①)
 また、今は治療の進め方は1つとは限らず、本当にさまざまです。そこで、どういう治療を受けてどう生きていきたいかをご自分で決めていただくことができるようになりました。治療法やその成績など、あらゆる状況をご説明して患者さんに選んでいただく時代になってから、病名を言わないということはほとんど皆無になったと思います。余命はどれくらいですか?と聞かれても、治療などによって個人差もあるので、医師は『統計上、このような経過をたどることが考えられます』というような説明をする場合が多いです。自分の現状がわからないまま、人が決めた治療を受けて、副作用や合併症に悩まされるような状態では頑張れませんね。ご自身が納得してから治療を始めていただくのが現在の医療のあり方です」。(川本さん)

■図1 がんの5年生存率の推移

図1 がんの5年生存率の推移

独立行政法人国立がん研究センターホームページより
http://www.ncc.go.jp/jp/information/press_release_20140919.html

看護師は患者の意思を「全人的なケア」で支える

 時代が変わり、医療が変化すると同時に患者さんも変化しました。ネット社会となり、患者さんの自身の病気に対する情報・知識が格段に増えて、次々と治療の要望を出されることもあるそうです。そんななか、川本さんたち医療従事者は、患者さんが意思決定をするための十分な情報・選択肢を提供することに心を砕いています。インターネットの情報がすべて正しいとも言い切れません。医師からご自身の病状についての詳しい説明を受け、必要に応じてセカンドオピニオン、サードオピニオンなども活用しながら十分な情報を集めて、納得のできる判断をしてほしいとおっしゃいます。
 そして、繰り返し難しい意思決定を迫られる患者さんと家族を支えるために、看護師は重要な役割を担います
 「どんな治療を受けながら、どんなふうに病気とともに生き、最終的に自分の生をどのように生き切るのかを考えながら闘病していただきたい。がんに限らず苦痛というと身体的な痛みをイメージされがちですが、それだけではありません。緩和するべき患者さんの苦痛は精神的なつらさや社会的な問題、スピリチュアルな苦しさといったこともあり、非常に複雑に絡みあっています。そして時にはそれらの苦痛が体の痛みとして表出していることもあります。患者さんにとっていちばん近い存在である看護師は、患者さんの苦痛を総合的に「全人的苦痛」(※図②)としてきちんと捉え、それが障害にならないように予防・対処することで、生を全うしていただくための支援を行っていきます。」(川本さん)

■図2 全人的苦痛

図2 全人的苦痛

「緩和ケアマニュアル」淀川キリスト教病院ホスピス編(2007)(最新医学社、一部改訂)より

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その① 「人生の最終段階における医療」への取り組み

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